不眠で病院へ行くと何をする? 専門家が原因を見つけるための検査や質問、受診は決して大げさではない理由
慢性的な不眠の悩みを抱え、「もしかしたら病院へ行った方が良いのだろうか」と感じつつも、「これくらいで受診するのは大げさなのではないか」「病院では一体何をされるのだろう」といった不安から、なかなか一歩を踏み出せずにいらっしゃる方もいるかもしれません。
不眠は放置すると心身の健康や日常生活に様々な影響を及ぼす可能性があります。そして、その不眠の原因は一つとは限らず、専門家による適切な診断とアドバイスが解決への近道となる場合があります。
この記事では、不眠で医療機関を受診する際に一般的にどのようなことが行われるのか、そして専門家が不眠の原因を見つけるために、なぜ特定の情報や検査が必要なのかについて解説します。病院受診に対する漠然とした不安を少しでも和らげ、専門家への相談を検討するための一助となれば幸いです。
不眠の原因特定のために最も重要な「問診」
不眠で医療機関を受診した際、まず最初に行われるのが「問診」です。医師が患者様から直接お話を伺うこのプロセスは、不眠の原因を探る上で非常に重要です。問診で得られる情報こそが、その後の検査や診断の方向性を定める基礎となります。
具体的には、以下のような内容について質問されることが一般的です。
- 不眠の具体的な症状: どのような不眠(寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚める、眠りが浅いなど)で悩んでいるのか。
- 症状が現れた時期と経過: いつ頃から不眠が始まったのか、どのように変化してきたのか。
- 不眠の頻度と期間: 週に何回くらい不眠があるのか、どのくらいの期間続いているのか。
- 睡眠習慣: 普段寝る時間と起きる時間、昼寝の有無、寝る前の過ごし方など。
- 日中の状態: 日中の眠気、倦怠感、集中力の低下、イライラなど、不眠による影響の有無。
- 既往歴: これまでにどのような病気をしたことがあるか、現在治療中の病気はないか。
- 服用中の薬: 処方薬、市販薬、サプリメントなど、現在使用している全ての薬。
- 生活習慣: 食事、運動、飲酒、喫煙の習慣、仕事や家庭でのストレスなど。
- 家族の睡眠に関する病歴: 家族に睡眠障害や不眠で悩んだ方がいるか。
- 睡眠環境: 寝室の環境(温度、湿度、明るさ、騒音など)。
これらの質問は、単に睡眠の状態を知るためだけではなく、不眠の背景にある可能性のある原因(ストレス、生活習慣、他の病気、使用している薬の影響など)を特定するために不可欠な情報となります。
身体診察と基本的な検査
問診の後、必要に応じて医師による身体診察が行われることがあります。血圧や脈拍の測定、体重測定など、一般的な診察です。
また、不眠の原因として体の病気が隠れていないかを確認するために、簡単な血液検査や尿検査が行われる場合もあります。例えば、甲状腺機能の問題や貧血などが不眠の原因となっている可能性も考慮されます。
より専門的な検査が必要となる場合
問診や基本的な検査で不眠の原因が特定できない場合や、特定の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など)が疑われる場合には、より専門的な検査が検討されることがあります。
- 睡眠ポリグラフ検査 (PSG): 脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、心電図、血中酸素飽和度などを同時に測定し、睡眠中の体の状態を詳細に調べる検査です。多くの場合、医療機関に一泊して行われます。これにより、睡眠の深さや質、睡眠中に起こる様々な異常(無呼吸、周期性四肢運動など)を客観的に評価できます。
- パルスオキシメトリー: 指先に装置をつけて、睡眠中の血中酸素飽和度を測定する簡易的な検査です。睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングとして行われることがあります。
- アクチグラフィー: 腕時計型の装置を装着し、数日間~数週間にわたって睡眠・覚醒リズムや活動量を測定する検査です。客観的な睡眠習慣や概日リズムの問題を把握するのに役立ちます。
これらの専門的な検査は、問診だけでは分からない不眠の根本的な原因を明らかにするために有効です。
なぜこれらの情報や検査が必要なのか
不眠の原因は多岐にわたります。単なる生活習慣の乱れだけでなく、ストレス、体の病気、精神的な問題、薬の副作用、そして睡眠時無呼吸症候群のような専門的な治療が必要な睡眠障害などが関係している場合があります。
専門家は、問診で得られた詳細な情報と客観的な検査結果を総合的に判断することで、不眠の背景にある真の原因を見つけ出そうとします。原因が特定できれば、それに応じた最も効果的な治療法や対処法を提案することが可能になります。
「これくらいで」と思わずに受診を検討する理由
「この程度の不眠で病院に行くのは大げさだろうか」と躊躇されるお気持ちは十分に理解できます。しかし、不眠が長く続いたり、日中の活動に支障をきたしたりしている場合、それは体が発する重要なサインかもしれません。
不眠を放置することで、集中力や判断力の低下、気分の落ち込み、イライラといった精神的な不調だけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める可能性も指摘されています。
医療機関での受診は、病気の診断や治療だけでなく、ご自身の睡眠の状態を専門家の視点から正確に把握し、原因に基づいた適切なアドバイスを受ける機会でもあります。「これくらい」と思わず、睡眠に関する不安を専門家に相談することで、不眠の悪化を防ぎ、心身の健康を維持することに繋がります。
まとめ
不眠で医療機関を受診する際には、まず丁寧な問診が行われ、現在の睡眠状況だけでなく、生活習慣や既往歴など、不眠の原因となりうる様々な側面からお話が聞かれます。必要に応じて、身体診察や基本的な血液検査、さらに専門的な睡眠検査が行われることもあります。
これらのプロセスは全て、不眠の根本的な原因を特定し、あなたに合った最適な解決策を見つけるために不可欠です。不眠は決して「気のせい」や「大げさなこと」ではなく、適切に対応することで改善が見込める症状です。
もし現在、不眠に悩んでおり、セルフケアだけでは改善が見られない、あるいは日中の生活に影響が出ていると感じているのであれば、一度専門家へ相談することを検討してみてはいかがでしょうか。専門家との対話を通じて、不眠の原因を知り、安心して適切なケアに進むことができるかもしれません。